僕は父親らしくできているでしょうか?
結婚して子どもができた。
父親になった。
ひとりのころより喜びは増えたが、その分苦労もある。
ある日、ふと父親のことを思い出した。
学生時代にはほとんど会話することもなく、
父親のことなど考えることもなかったのに。
何が楽しくて毎日決まった時間に仕事に出かけて、
決まった時間に仕事から帰ってくる。
父親が楽しく笑っている姿の記憶はない。
でも最近になって少し分かってきた。
どうして30年以上も働き続けることができたのか。
どうしていつも子どもたちのことを叱ってばかりいたのかを。
「お父さん、僕は父親らしくできているでしょうか?」
父にたずねる。
「・・・」
僕は家族のきちんとファイルを握りしめる。
仏壇の父が生きていたあの時と同じように
静かに見守ってくれているような気がした。