妻が働いていた理由
最近、妻がけだるそうにしていることが多い気がする。
心配して声をかけると、妻は答える。
「少し、疲れただけ」
「そうか・・・」
少しばかり気になったが、
仕事で疲れていたので聞き流してしまった。
それから何ヶ月か後、体調が悪くなり病院へ。
診断はガンだった。
病気と向き合う日々が始まった。
しかしそんなある日、妻が
「パートに働きに出たい」
と言った。
5歳の息子が産まれるまでは働いていたが、
子どもが産まれてからは働いたことはない。
治療費を気にしてのことだったというのは、後で知った。
「そんなことを考えさせてしまった」
自分が悔しかった。
「頑張っている姿を息子に見せたいから」
と妻は言った。
懸命に働く妻の姿を見て、息子も誇らしく思っているようだ。
あれから25年。息子が結婚をするという。
息子と新しく娘になる2人に「きちんとファイル」を紹介した。
苦労させてしまった妻のような想いは、
この子たちにはさせたくなかったのだ。
「へー。こんなのあるんだ。こういうの初めて聞いたわ」
と息子。
「きちんと考えとけよ。自分たちの事なんだから」
突っ込みを入れた後、2人を送り出した。