・・・普段の父らしくない 素直なことば
「うるさいわクソジジイ!」
「誰がクソジジイや、クソガキ!」
私が成人してもずっとこんな感じだった、
私とお父さん。
ある日、仕事中に弟からの電話。
「お父さん、もう末期がんで、もってあと1ヶ月らしい」
帰ったら、家ではお母さんと妹がわあわあ泣いてるし、
弟は呆然としている。
猫たちも家族の異常を察してか、静かにたたずんでいる。
「これから私たち、どうなるの?」
お母さんに聞くと、泣きはらした顔で
「こんなの見つけた」
と私に渡してきた。
「きちんとファイル」というファイル。
その上に手紙がのっていて、
たった一言ずつだけど、一人一人にあてたものが入っていた。
私には、
「何も心配しなくていい。
ただ見舞いには来てくれよ。寂しいから」
・・・普段の父らしくない、素直なことば。
その日は皆で泣いたけど、
次の日には笑顔を作って、見舞いの時にはこう言ってやろう。
「粋なことするね、お父さん。
ありがとうね。一緒に頑張ろうね」