思い浮かぶ母の顔は 笑顔に変わっていた
「あんた、少しはきちんとしなさいよ!」
それが母の昔からの口癖だった。
宿題、片付け・・・
何かにつけて言われるばかり。
何で分かってくれないんだろう・・・?
いつもそう思うしかなかった。
ひとり暮らしを始めた。
ふとよぎる恐い顔と一緒に思い浮かぶのは、
いつものあの口癖。
不思議だけど、嫌じゃなくなっていた。
ひとり暮らしじゃなくなった今でも、
実家で聞くあの口癖は変わらない。
変わったのは僕の想いだった。
「きちんと、できてるかな?」
オレンジ色のきちんとファイルを見せながら。
あの口癖と一緒に思い浮かんでいたいつもの顔が、
笑顔に変わっていた。