大きな財産を残してやる事はできないが これは私の想いだ

大きな財産を残してやる事はできないが これは私の想いだ

大きな財産を残してやる事はできないが これは私の想いだ

「あけましておめでとう。
昨年はみんな元気で無事に過ごすことが出来て本当に嬉しいよ。
今年もよろしくお願いします」

床の間に飾られた自慢の掛け軸を背に、
81歳になる父が、集まった兄弟親戚に向かって挨拶する。

毎年元旦の朝に行われるお正月の行事だ。
おとそを順番にいただき、母が手料理のおせちをみんなに振舞う。

お年玉をもらった子どもたちの歓喜やけんかの声が響くなか、
父が私たち兄弟に向かって、

「私に万一のことがあった時には」
と話し出した。

「正月早々、そんな話いいじゃないですか」
とさえぎる言葉に、

「いや、こんな時だからこそ、話しておかないといけない」
と何かを決意した顔で、私たちにきちんとファイルを渡した。

「大きな財産を残してやる事はできないが、これは私の想いだ」

近くではしゃぐ子どもたちをみて、
私の想いもまとめないといけないと思った。




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