今年の冬は孫とかまくらを作らないとね
私の小さいころ、父は平日休みの中でも有給をとって、
旅行やキャンプ、ドライブなどによく連れて行ってくれた。
冬になるとスキーや、家の庭でのかまくらづくりが楽しみで、
よく一緒に作っていた。
そんな私にも、結婚して子どもが産まれた。
今年も雪がしんしんと降る中、
家族で一緒に実家へ帰ることになった。
居間で私一人がくつろいでいるところに父がやってきた。
お互い口数が少なく、気まずさを感じているときに、
父の第一声。
「おい、これプレゼントや」
一冊のファイルと、リボンが巻かれた小さい箱を渡された。
ファイルには「きちんとファイル」と書かれていた。
箱の中身は小さなコートと、長ぐつ、スコップが入っていた。
ファイルの中には、父の加入している保障の一覧。
受取人には私の名前。
多くを語らない父だが、私たち家族の為にしっかり準備をしてくれていて、
初孫も楽しみにしていたんだなと思った。
「今年の冬は、もらったコートと長ぐつを履いて、
孫とかまくらを作らないとね。」
私がそう言うと、父は照れくさそうに笑った。