親に頼られた嬉しさ いつかはくる最後のときの悲しさ 色々と考えてくれた優しさ
年2回の帰省。
平日に帰った私と子どもを、母が空港まで迎えに来てくれた。
車内では母の愚痴。
「お父さんと久しぶりに大喧嘩したんだけどさ・・・」
86歳で一人暮らしをしている祖母。
ちょこちょこ様子は見に行くものの、
見に行くだけの父に、母はイライラしているそうだ。
「家と畑残されても、うちには維持するお金もないし、
今のうちに、おばあちゃんがどうして欲しいのか聞いて、
兄弟3人で話し合ってよ」
何回も言ってるのに何か遠慮しちゃうんだろうね。
母親だから。男ってそんなもんなのかな。
嫁の立場だから、お母さんは意見しにくいのよ。
・・・そんな内容だ。
介護施設で働いている母は、
そうした相続の大変さや揉め事を嫌というほど見てきたそうだ。
「お母さんは散骨でいいからね」
「散骨ってどこでもできるわけじゃないんだよ?知ってる?」
そんな会話をしながら家に着いた。
家に着いたら、今度は母たちの相続の話に。
「お父さんとお母さんはこの家を売って、
最後は施設に入ろうって決めてあるから」
「財産も残さないけど、迷惑も残さないように考えてる。
あとお父さんの親戚と一緒の墓に入りたくないから、
6年前に納骨堂を用意したの。
お母さんはそこに入れて。」
・・・私は苦笑いだ。
孫会いたさに、夕方早く帰宅した父も、途中参加で苦笑い。
(なんだ・・・知ってるんだ。何だかんだで相変わらず仲がいいな)
娘として嬉しかった。
あっという間の4日間。
他愛のない会話をしながら、また空港まで送ってもらった。
別れ際、
「荷物増やして申し訳ないんだけど・・・」
母から2冊のファイルを渡された。
「きちんとファイル?何これ?」
「まあ、あとでゆっくり見てよ。よろしくね」
「・・・よろしく?」
自宅に帰り、子どもを寝かせたあと、
そういえば・・・と預かったファイルを開いてみた。
父と母の保障内容に、手紙が添えられていた。
「迷惑は残さないとは言いましたが、
なにか残ったときはあなたたちにお願いするしかありません。
最低限の迷惑で済むように2人で話して準備しました。
何かあったときのために、あなたに預けます。よろしく」
親に頼られた嬉しさ、いつかはくる最後のときの悲しさ、
色々と考えてくれた優しさ。
あふれる気持ちと親のありがたさを改めて感じた。
私もいつか、子どもに同じことをお願いする日がきっとくる。
ただその時がいつ来るかわからない。
だから準備しよう。
「きちんとファイル」