2人のことを認めてくれるもの
10年目の記念日に、
はしゃぐ彼ときちんとファイルを作りに行った。
お互い結婚生活に失敗したもの同士だから、
子どもたちのためにも籍は入れずにと決めていた。
あきらめてはいたけれど、
アパートの表札にある2つの名字は、
「訳ありです」のレッテルみたいな気がした。
初めて会う人には、
その都度、古い傷を話さなければならなくて。
ただ一緒にいたいだけなのに、
この国ではこんな生き方、認めてもらえないのだと悲しかった。
でも、きちんとファイルだけは2人のことを認めてくれる。
2つの名字がならぶ、
きちんとファイルは2人が生きた証です。