自分だけのためじゃなかったんだ

自分だけのためじゃなかったんだ

自分だけのためじゃなかったんだ

いつも健康に気をつかって、
食事制限をしたり、ジョギングをしてみたり。
もちろん今まで病気をしたことなんてない。

・・・そんな父が、がんになった。

ショックだった。
一番ショックなのは本人だろう。

さいわい、あまり進行していなかったこともあり、
無事に手術を終えて、
抗がん剤治療をすることになった。

(・・・治療費、どうしよう。)

命の危険が去ると、
急にお金のことが心配になってきた。

病院の領収書を2人で見て、母と私は頭をかかえた。
私は幼い子どもをもつ専業主婦。
母は年老いた祖母の面倒をみている。

そんな私たちの心中を知ってか知らずか、
ベッドの上の父が、花瓶の水をかえる私に声をかけた。

「お金のことなら、心配いらないからな。
父さんの書斎の戸棚にある、オレンジ色のファイルを見てみなさい」

早速家に帰ってオレンジ色のファイルをさがした。
ファイルを開くと、いろいろな保険が並んでいた。
私は急いで電話をかけた。

お金が受け取れることがわかって安心した私は、
何気なくファイルをながめていた。

 

(父さんが保険に入ってるなんて、知らなかったな・・・)

寡黙な父だが、きっと私たちに何かあったときのことを、
常に考えていたのだろう・・・。

・・・だから父は、いつも健康に気をつかっていたのか。
あれは自分だけのためじゃなかったんだ。

 

あまり多くを語らない父が、胸に秘めていた想い。
病気を期に、このファイルの中からみつかった。




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