命をかけて 私たちのこと 考えてくれてたんだね
年老いてからの私の母の口ぐせは、
「お前たちには迷惑かけたくないから・・・」
だった。
そんな母が子宮がんになり、余命宣告を受けた。
悲しみに打ちひしがれる私。
母はあらかじめ覚悟していたのか、やけに冷静だった。
「私に何かあったら、このファイルを持ってお店へ行きなさい」
そっと私にオレンジ色のファイルをわたした。
「そんなこと言わないでよ・・・」
私はファイルの中を見て、泣きじゃくった。
・・・母が亡くなり、四十九日も終わったころ。
母から言われた通り、ファイルを持ってお店を訪ねた。
お店の人が、ファイルを作ったときの母の想いを話してくれた。
「年金暮らしであまり保険料は払えないけど、
子どもに迷惑をかけないようにきちんとしておきたい」
そう言っていたそうだ。
お母さん、ありがとう。
命をかけて私たちのこと、考えてくれてたんだね。
私も母のように、わが子を愛する母親でありたい。
・・・母は私の誇りだ。