たったふたりの家族なんだから

たったふたりの家族なんだから

たったふたりの家族なんだから

母ひとり、娘ひとり。
普通は仲良く助け合うものなのだろう。
でも、私たちは違っていた。

私があの家を出て、もう何年になるだろう。
もう顔も見たくないと思っていた。

どうしても必要なものがあって実家に帰ったとき、
ひさしぶりに会ったあの人は何もかもが変わっていた。

白髪の増えた頭、
深くしわの刻まれた顔・・・

私をよく叱り付けていた、
あの頃の姿とは大きくかけ離れていた。

帰りの新幹線、ぼんやり窓の外を見て、
さっき別れたばかりのあの人の顔を思い出す。

ふと、帰り際に持たされた紙袋をのぞく。
小さいころに大好きだったおまけ付きのチョコレート。
集めていたぬいぐるみ。
友達と取り合ってこわれた人形まで入ってる。

全部見覚えのあるものばかりなのに、
ひとつだけ見たことのないオレンジ色のファイルが入っていた。

すいよせられるように手に取り、そのファイルをひらく。
気がついたら、泣いていた。

また会いに行くよ、お母さん。
たったふたりの家族なんだから。




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