お前にも 守らなきゃいけない人たちができたんだろ?
10ヶ月の娘をつれて
久しぶりに実家へ帰った。
玄関を開けると
「あら、いらっしゃい。」
と満面の笑顔で、可愛い孫を抱き上げる母。
何年か前までは、僕におかえりを言ってくれてたのに、
少し変な気分。
でも、そんな嬉しそうな母の顔をみると、自分も嬉しかった。
居間でお茶を飲みながら、
娘をあやす母をながめていると、
父がいつになく真剣な顔で、
オレンジ色のファイルを差し出した。
「何かあったときの為に持っておけ。」
「何これ?」
中身をみると、父の保障の一覧がまとめられていた。
受取人には、母と私の名前。
「何だよ、急に。」
「守らなきゃいけない人たちができたんだろ?」
そう一言残すと、父は娘のところへ。
(どういう意味だろう・・・?)
一瞬父の行動の意味が分からなかったが、
おそらくは
「お前も家族を持ったんだから、俺みたいにこうやってきちんとしておけよ」
本当はそう言いたかったんじゃないか。
父の背中に、「父としての生き方」のようなものを感じた。
伝え方は不器用で、回りくどかったけれど。
「・・・僕もきちんとしなきゃな。ありがとう、父さん。」