・・・胸の奥がぎゅっと締めつけられる
学生の頃は、母とはなかなか向き合えなかった。
お互い素直になれない性格で、
何かある度にケンカばかり。
「本当にうるさいなぁ、もう大人なんだから
そんなに細かく言わないで!」
生意気な口ごたえばかり。
絶対に早く家を出て解放されたい、
なんて思っていた学生のころの私。
社会人になり、世の中を知れば知るほど、
自分がいかに恵まれていたのかを実感させられる。
何不自由なく大学まで行かせてくれた両親。
そして机の上には、実家から出てくるときに渡されたオレンジ色のファイル。
母は何も言わずに渡してくれたけど、
中を見ると母の気持ちが私に語りかけてくる。
中身を見ると「何が起きても大丈夫なように」と、
母がかけておいてくれてあるいくつもの私の保障が目に飛び込んでくる。
・・・胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
素直になれずに、ろくに感謝の言葉も伝えられてない。
まだ何も返せていない。
あんなにうるさかった母も最近は涙もろくなり、
私の結婚を想像するだけで泣けてくるようだ。
そんな予定無いのに。
愛されているなと感じる。
「私も結婚したらあのファイルをつくる。
お母さんみたいな良い母親になる。」
今度会ったら、それくらいは頑張って素直に言おう。
少しだけ素直な私になろう。