ボクの父は ヒーローだった
ボクの父は警察官だ。
かっこいい白バイに乗り、ボクの中ではいつもヒーローだった。
そんな父はボクは大好きだった。
突然のことだった。
ボクが10歳のとき、父が亡くなった。
職務中の事故だった。
「なんでボクのお父さんなんだろう?
ヒーローって死なないんじゃないの?」
ボクは神様を恨みながら、毎日泣き続けた。
そんなボクの前で、母は決して涙を見せなかった。
毎日泣き続けるボクに、
母は1冊のオレンジ色のファイルを差し出した。
「きちんとファイル・・・?なんだろう?」
開くと、10歳のボクにはよく分からない保険の内容だった。
「何これ?」
と思いながら開くと、毎年ボクの誕生日に
父からボクへのメッセージが書かれていた。
「もう10歳。あと10年で成人なんだから、もう半分大人だね。
お母さんと妹の面倒をたのむよ。」
毎年送られてきた10通のメッセージに目を通すと、
ヒーローだった父に恥ずかしくない大人になろうと
気持ちが奮い立たされた。
・・・そんなボクも今では父と同じ警察官。
亡くなった頃の父と同い年になった。
「あなた、明日はあの子の誕生日だから早く帰ってきてね。」
妻が玄関でボクに言う。
ボクも息子に、今年10通目のメッセージを送る。