パパの夢とママの夢
「ちーちゃん。パパとママどっちが好き?」
幼い私に聞くパパを、
「子供にそういうこと聞かないでよ」
と怒るママ。
一人娘の私をめぐって競争しているみたい。
私の将来についても意見が対立する二人。
パパは、「女だって世界に出ていく時代だ。留学だ。」
ママは、「女の子らしく、ピアノ続けて欲しい。音大ね」
私に託すのは、自分達の夢だったのかしら。
共働きだった二人は、何かあっても、それぞれの道に進めるように
各々で積み立て保険を始めた。
十数年の時が過ぎ、私は音大に進学した。
ママの夢を叶えてしまったわけで。
苦々しい顔のパパ。ゴメンネ。
それから数年後、私は、音大で出会った留学生の彼との結婚が決まった。
旅立ちの朝、パパがオレンジ色のファイルを手渡してくれた。
私のために積み立ててくれた保険の内容が記載されている。
「こんな留学させるためじゃなかったのに」
苦々しい顔のパパ。その目には涙が。
悔し涙じゃないよね。