「ファイル」と「家族」から はなれて歩き出す
友人の結婚式に招待されて、
披露宴でのスピーチを頼まれた。
子どもの頃からの幼なじみで、
お互いのことは知りすぎるほど知っている。
おじさんやおばさんとも仲良し。
でもさすがに、
会社の方やお相手の家の人たちも出席される披露宴なので、
自分たちばかりのことを話すだけではいけないなと思い、
おばさんにどんな話をしようかと、相談しに行った。
おばさんはちょうど家の中を整理していたみたいで、
子どもの頃の私たちの懐かしい写真を見せてくれた。
思い出話をしていて、しばらくしていたら、
おばさんが手にしているオレンジ色のファイルに目がとまった。
「何?それ?」
私が聞くと、おばさんは目を潤ませて言った。
「あの娘がお嫁に行くでしょう。
だから、これまで家族でかけていた保障から外れて、
自分たちの家族をつくるのよ。
このきちんとファイルからあの娘が外れて、
でもまた彼女たちは自分のきちんとファイルを
つくっていくのよ。
なんだか嬉しいような。
でも、さみしいのよね・・・。」
私もおばさんの手を取って、一緒に泣いてしまった。
実家に帰ったら、私も母にきちんとファイルのことを聞いてみよう。