考えておいてね 私が死んだあとのこと

考えておいてね 私が死んだあとのこと

考えておいてね 私が死んだあとのこと

「大事なことを伝えたいから、幸子さんと一緒に来て。」

仕事で忙しい僕に、申し訳なさそうに電話でお願いするおふくろ。

次の休日を使って久々に妻と実家を訪ねた。

親父が入院した後の電話だったので、
どんな話なんだろうと少しだけ不安になった。

到着したとたんに挨拶もそこそこに、家中をせわしなく歩き回って、
おふくろが持ってきたのは、

僕が小学生の頃、図工の時間に作った木箱だった。
フタにはへたくそなヒマワリが彫ってある。

「こんなもの、よく取っておいたな。」
あきれる僕におふくろが

「こんなものの中に大事なものが入ってるなんて誰も思わないでしょ。」

3人が笑いながらフタを開けると、
いくつかの通帳と印鑑、そして保険証券。

「いつ逝くか、わからないからね。」

親父が入院したことで、急に心配になったのか、
死んだ後のことを僕と妻に説明しているおふくろを見るのは、
少しさびしかった。

家に戻ってしばらくして、妻が急にスマホの画面を見せてきた。
「きちんとファイル」と書かれている。

「私たちだって、その時がいつかだなんてわからないもんね。」
なんだか僕もきちんとしなきゃと思った。




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