・・・孫の顔を見るまで 私もがんばるわ
ある日、母に呼び出され、実家に帰った。
家に着くと兄も呼ばれており、
ひさしぶりに家族3人が揃った。
母子家庭で女手ひとつで育ててくれた母も、
今年で60歳だ。
「今日はなにかあったの?」
母に聞くと、重そうに口を開いた。
「この前受けた健康診断でひっかかって、
今日病院に行ったら、乳がんで、もう長くないって言われたの・・・。」
僕と兄は頭が真っ白になり、何も聞けなかった。
後日、兄とふたりで話し合った。
これからどうすべきか?治療費はどうするか?
兄も私もお互い結婚して、もうすぐ子供も生まれる。
大変だが、二人で協力しようと話し合った。
入院当日は、私が病院に送っていった。
病院につくと、母からオレンジ色のファイルを渡された。
「きちんとファイル」と書いてある。
「昨日、保険の給付の相談に行ったら、私の保険をひとつにまとめてくれたの。
これが私の入ってる保険だから、何かあったらこれを見てね。
・・・孫の顔を見るまで、私も頑張るわ。」
ファイルの中は紙一枚。
しかし母の想いはいっぱいだった。