これからの父さんの誕生日は 僕が祝ってあげるよ

これからの父さんの誕生日は 僕が祝ってあげるよ

これからの父さんの誕生日は 僕が祝ってあげるよ

もうすぐ父の60歳の誕生日だ。

僕たち兄弟は自然に実家に集まってくる。
そして、父へのプレゼントを仏壇に供える。

父は僕が高校生の時にガンで他界していた。

父は生前、自分の誕生日におこづかいでケーキを買ってきては、
家族にふるまってくれた。

無口で付き合い下手な父にとって、
誕生日はお祝いされたい日というよりも、
家族を喜ばせる日だったのかもしれない。

そんな父が亡くなってから数年、
成人式を迎える朝。

母が仏壇の引き出しから、大切そうにオレンジ色のファイルを出してきた。
「きちんとファイル」と書いてある。

「何これ?どうして今頃?」

「お父さんは、本当は亡くなったあとも、家族を支えてくれていたのよ。
昔から20歳のあなたと一緒にお酒を呑むのを楽しみにしていたから、
お酒を呑むその代わりに、お父さんの想いをわかって欲しくてね。」

ずっと父に助けられていたなんて・・・。
無口な父を少し頼りなく感じていた自分が恥ずかしかった。

その日、オレンジ色のファイルを片手に乾杯して、
僕は誓ったんだ。

これからは父の誕生日は僕が祝ってやるし、
家族を守って行かなきゃってね。




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