ああそうか 次は私の番か 大丈夫 守ってあげるからね
久しぶりに実家に帰ってきた私は、
懐かしい匂いのなか、昔読んだ本やアルバムをながめていた。
その中のより古ぼけたアルバムを手にとってみる。
生まれたばかりの赤ん坊と一緒に女性が写っている。
数枚の写真を見てニヤついた私は母を呼んだ。
「こうやって見ると、お母さんの若い頃って今の私にそっくりじゃない?」
食事の準備をしていた母は手を止め、横からのぞきこんだ。
「ふふふ。そうね。このときは大変だったわ。
なかなか出てこなくて、結局帝王切開したのよね。
長いこと入院しちゃったし。」
すると、あ、そうそう。と言いながら、
オレンジ色のファイルを持ってきた。
「何?これ?」
「あなたももう、家出てったんだし、整理しようと思ってまとめたんだよ。」
「保険なんて入ってたんだね。」
「そりゃそうよ。あなたが生まれるときにね。
しっかり守ってあげたいと思って。」
私の大きなお腹をさわって、母は台所へ戻っていった。
ああ、そうか。
次は、私の番か。
大丈夫。守ってあげるからね。
お腹を中から蹴っている、来月に会える我が子を想像していた。