初めて感じた 母の愛
私は母が嫌いだった。
物心つく小さい頃から父と母のケンカは絶えず、母はいつも父を激しく罵倒する。
耐え切れない私と姉は、別の部屋の押入れに隠れる毎日・・・。
ついには、父も家を出て行ってしまった。
私の高校の卒業式の日。
高校を卒業したら家を出ようと決めていた私は、
姉の説得も聞かず、家を飛び出した。
それからは母にも会わず、月日は流れ・・・。
私は結婚して、自分の家族も出来た。
結婚の報告も含めて、姉と久しぶりに連絡を取った。
「もう何年も経ってるんだからいいでしょう?
お母さんも年を取ったし。久しぶりに顔を見せてあげなさいよ。」
姉の言葉に突き動かされ、20年ぶりに実家へ帰ることに。
「・・・ただいま」
「・・・おかえり」
そこには私の知る母の姿はなく、年老いた白髪の女性が座っていた。
お互いに言葉が見つからず、気まずい沈黙が流れ続ける。
「・・・戸棚に入っている包みを持って帰りなさい。」
母がぽつりと言った。
中をあけてみると、私が小さい頃の家族の写真。
一緒にオレンジ色のファイルが入っていた。
「あとこの先、何度会えるかわからないからね」
母は照れくさそうに言った。
初めて感じた、母の愛。
離れていても想っていてくれたことに、涙があふれた。