父からもらった 最初で最後の手紙
3年前、父が肺ガンを患った。
手術をしたが、ガンはすでにあちこちに転移していた。
それから父の長い闘病生活が始まった。
抗がん剤治療、放射線治療と治療はすべてやりつくした。
すべて手を尽くし、やせ衰えていく父を見ながら、
一日でも長く生きてほしい思いと、早く楽になってほしい思いが
心の中で交差した。
亡くなる数ヶ月前、病室で母が私にファイルを見せてくれた。
表紙には「きちんとファイル」と書いてあった。
そのファイルを開けて、母が私に言った。
「お父さんね、私のために、きちんとした保険に入ってくれてるから
心配しなくていいわよ。
お父さんも見せろって言ってたからね。」
そしてファイルに添えてある手紙を私に渡してくれた。
「父より 私の息子に生まれてくれてありがとう」
父からもらった、最初で最後の手紙だった。