「俺に何かあった時は このファイルを見ろよ」
父の葬儀も終わり、一人でリビングでぼんやりしていた時、
母が何かを手にやって来て
「これ、あなたにお願いね」
と手渡されたオレンジ色のファイル。
「きちんとファイル」と書かれている。
おもむろに開くと、そこには母が加入している保障の一覧と
受取人に私の名前が書かれていた。
「どうしたの?これ」とたずねると、
お父さんも母にこれと同じものを渡してくれていたとの事。
母は大事そうに、古びたオレンジ色のファイルを見せてくれた。
そこには何枚もの一覧表がファイリングされており、
私が生まれた時から大学に入ったとき、結婚したとき、
父が定年になったときに加入していた。
それぞれの見直しをした際の保障と、
父の想いが書き添えられていた。
母いわく、
「俺に何かあった時は、このファイルを見ろ」と言われていたとのこと。
最後の一枚には、治療の度に給付請求をした日付が並び、
最後の日付は父が亡くなった日になっていた。
無口だったハズの父の想いに触れた一日となった。