「赤いバラの花を十本ください」 少し照れくさそうな男性のお客様
主人に先立たれ、進学を控えた娘を育てるために
はじめた小さなお花屋。
売れなくて、何度やめてしまおうかと思ったかしれない。
とある夕方、
「赤いバラの花を10本ください」
少し照れくさそうな男性のお客様。
でもあいにくの売り切れで、
「ごめんなさい」
と、謝りの言葉が口から出そうになった時、
手伝いをしてくれていた娘の一言。
「お客様、10本に何か意味があるんですか?
お花に託して伝えたい想いは何ですか?」
私はハッとした。そうだ・・・
私はただお花を売っているのではないと
気付いたときから、
お店は生きがいの場になった。
あのときの娘の言葉のおかげで。
その娘が嫁ぐことに。
「今まで言わなかったけど、感謝しているよ。
そうそう、もうひとつ言わなかったことがあるの。
私のこと、きちんとファイルにしてあるよ。
受取人はあなただよ。」